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第七十二話 秘書さんのお名前

Author: 柳アトム
last update Last Updated: 2025-11-08 03:17:40
 とにかく私の子育てが大変で、幸恵さちえに助けを求めるのはどうかという手段は、幸恵が宗司そうじさんの秘書さんとお付き合いを始め、子どもができたので無理だった。

 幸恵は絶賛つわりの真っ最中で、今は見るもの嗅ぐもの聴くもの全てが吐き気の対象で、自宅で溶けたアイスクリームのように項垂れているとのことだった。

 そんな幸恵だが「充希みつきはよくこんな···なんていう辛い状態を乗り越えたわね。私も何人も妊婦さんを診てきて···について説明とアドバイスをしてきたけど、いざ自分がその状況になるとこんなに辛い状態になるとは思わなかったわ。きっとこれから妊婦さんに···のことを話す私の言葉は、今までと重みがまったく違った言葉になるでしょうね」と前向きだった。

 さらに幸恵が大変な状況にあるのは···だけが原因ではなかった。

 幸恵が妊娠したことで、幸恵と秘書さんは結婚をする運びとなったのだが、まだお互いのことをお互いの両親に紹介はおろか、自分たちに恋人ができたという報告さえもしていないとのことだった。

 幸恵と秘書さんのご両親は、これから自分の息子、娘に恋人ができたことを知らされ、さらに子どもができ、結婚すると報告をされるわけだが、その驚きたるやいかほどのものだろうか。

 そんな大変な状況ではあったが、当の本人たち───とくに幸恵は落ち着いていた。

 それは幸恵の恋人である秘書さんが本当に有能で、そうした諸問題の一切を解決に向けて動き出してくれていたからだった。

 秘書さんは諸問題をあっという間にリストアップし、優先度と工数を洗い出し、スケジュール表を作って計画を立てていた。

「幸恵さんの···が治まったら両親への挨拶に行きます。まずは僕が幸恵さんのご両親に挨拶に行きます。僕の両親には僕から事前に報告はしておくけど、幸恵さんが僕の両親と会うのはその後です。

 そして結婚式を挙げる式場の候補はこれで、日取りの候補はこれ、そして招待状を送るお世話になった方々や親友、親族のリストはこれで、ブライドメイドは充希さん、ベストマンは宗司社長にお願いをする予定です」

 その他にも結婚披露宴の予算や内容、タイムスケジュール、そしてご来場いただくお客様の席の並びに至るまで、秘書さんは事細かに計画をまとめていた。

 その
柳アトム

------ 【登場人物】 ------ ▼杵島 充希(きじま みつき)/旧姓:大和田 充希  宗司と三年という期間限定の偽装結婚をするが双子を妊娠。  紆余曲折を経て偽装結婚を解消し、宗司と真の夫婦となる。  双子を出産して育児に追われる日々を過ごし、疲労がピークに達している。  双子は姉長女の琴(こと)と弟長男の勇(いさむ)。宗司が新選組に因んで命名した。 ▼杵島 宗司(きじま そうじ)  充希の夫。充希とは幼馴染で、同じ中高一貫校に通った同級生。  子煩悩で育児に積極的に参加するイクメンパパ。  遺憾なくスパダリっぷりを発揮する。 ▼藤堂 幸恵(とうどう さちえ)  充希の担当産婦人科医で親友。  充希、宗司と同じ中高一貫校の同級生で剣道部の部長。  妊娠が発覚し、つわりの症状に苦しめられている。 ▼篠原 彩寧(しのはら あやね)/大和田 彩寧  充希の異母姉妹の妹。  中高一貫校の先輩である宗司が好きで、執着している。 ▼大和田 毅(おおわだ つよし)  充希の父。  大和田グループの社長。 ▼篠原 真紗代(しのはら まさよ)/大和田 真紗代  彩寧の母。大和田 毅の元妻。  自らの浮気が原因で大和田家を去る。 ▼忽那 碧(くつな みどり)  充希の産みの母。充希の父親の大和田 毅とは相思相愛。  総合病院の救命救急士。 ▼種村 崚佑(たねむら ゆうすけ)  幸恵の医大時代の同級生で、産婦人科医。  面倒見が良く、猫が好きで、動画配信も盛んに行っている。 ▼宗司の秘書  宗司が信頼する優秀な秘書。幸恵のダーリン。  名前は鬼灯 猿田彦(ほおずき さるたひこ)だが、皆から「秘書さん」と呼ばれている。 ▼杵島 巧三(きじま こうぞう)  宗司の父で、杵島グループの会長。  充希のお義父さんにあたる。

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